東京家庭裁判所八王子支部 平成7年(家)1353号
主文
1 被相続人の遺産である別紙遺産目録掲記1の<6>の土地は相手方達也が取得する。
2 被相続人の遺産である別紙遺産目録掲記1の<1><2><3><4><5>の各土地および同目録掲記2の<1><2><3><4><5><6><7><8>の各建物はいずれも申立人両名がそれぞれの持分を2分の1として共有で取得する。
3 被相続人の遺産である別紙遺産目録掲記1の<7>の土地は申立人両名および相手方達也の3名がそれぞれの持分3分の1として共有で取得する。
4 被相続人の遺産である別紙遺産目録掲記3の各貯金、同目録掲記4の各出資金、同目録掲記5の各建物更生共済積立金、同目録掲記6の現金はいずれも申立人両名および相手方達也の3名がそれぞれその3分の1宛て取得する。
5 被相続人の遺産である別紙遺産目録掲記7の電話加入権および同目録掲記8の家具その他の家庭用財産は相手方達也が取得する。
理由
1 (申立)
申立人両名は被相続人の遺産分割を求めた。
2 (事実)
本件事件記録中の戸籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票写し、土地建物登記簿謄本、相続税の申告書その他財産関係の書類、当事者ら作成の陳述書類、等の証拠に申立人両名と相手方達也の各審問の結果を総合すると下記(1)ないし(3)の事実が認められる。
記
(1) (相続の開始、相続人、相続分)
被相続人は平成5年6月17日に死亡して相続が開始した。被相続人の妻の長谷川年子は昭和60年6月23日に死亡し、被相続人と長谷川年子夫婦の長男の長谷川圭一は昭和19年11月19日に死亡していて、被相続人の相続人は被相続人夫婦の二男である相手方達也、同じく三男である申立人広士、同じく四男である申立人佑士の3名であり、その各法定相続分はいずれも3分の1である。本件においてはどの当事者からも寄与分の申立はなく、相続分は法定相続分どおりである。
(2) (遺産)
本件遺産は別紙遺産目録掲記1の<1>ないし<7>の各土地(以下、本件遺産土地<1>等という)、同目録掲記2の<1>ないし<8>掲記の各建物(以下、本件建物<1>等という)、同目録掲記3の各貯金、同目録掲記4の各出資金、同目録掲記5の各建物更生共済積立金、同目録掲記6の現金、同目録掲記7の電話加入権、同目録掲記8の家具その他の家庭用財産である。相手方達也は本件遺産<6><7>については相手方達也の借地権がありとし、遺産はその底地権のみであると主張しているが、その借地権存在の事実は認めることはできない。
なお、本件遺産土地<1><2>は相続開始時の小金井市○町×丁目××番×の土地を分筆して2筆としたもの、本件土地<6><7>は相続開始時の小金井市○町××丁目××番×、4、5、6および同所××丁目○×番×の各土地を合筆した土地(同所××丁目××番×・畑1216平方メートル)を分筆して2筆としたものである
(3) (本件に関する事情)
申立人両名および相手方達也(以下、この3名を当事者らという)は、本件相続に関して自らの寄与、相手の特別受益等についてそれぞれいうところはあるが、結論として寄与分の確認の申立や特別受益の考慮等の法律的主張をせず、法定相続分の割合に応じた分割をすることに落ち着いている。
遺産中の不動産の現物は、小金井市○町×丁目にある各土地(本件遺産土地<1>ないし<5>)とその地上の各建物(以下、一括して×丁目の物件という)と、同所××丁目にある各土地(本件遺産土地<6><7>・以下、一括して××丁目の物件という)に大きくいって2分される。当事者らにおいては本件相続についての相続税の支払いが困難な事情があって、遺産の土地の一部を物納すること以外に方法がなく、当事者ら間において××丁目の物件のうちの遺産建物や第三者所有の建物の建っていない本件土地<7>を物納することについて合意が成立している(本件土地<6><7>への分筆はそのために為された)。相手方達也は被相続人の生前、昭和43年3月頃から××丁目の物件において店舗を設けて園芸センター(○○園)を営んでおり、今後も××丁目の物件のうちの税金の物納に予定されている本件土地<7>を除いた部分である本件土地<6>でその営業を継続していくつもりであることを考慮すれば、本件土地<6>を相手方達也に取得させるのが相当である。相手方達也は現在は×丁目の物件である遺産の土地建物に居住しているが、以前には××丁目の物件上(現在、本件土地<6>上)の相手方達也所有の現存する建物を住居としていた時期があり、本件土地<6>を単独で取得すれば、×丁目の物件の住居を引き払って××丁目の物件に移ることが予定されている。×丁目の物件は遺産の共同住宅や各独立建物(申立人両名が居住する各建物と貸家)とその敷地および賃貸用駐車場である。申立人両名は、その貸家用の建物を一軒ずつ無償で使用専用、居住している。申立人広士は遺産の不動産とは別の場所のビルの1室を賃借してそこで飲食店を経営している。申立人佑士は陶芸制作や陶芸教室の仕事を、遺産の居住している貸家用の建物やマンションの空き室を利用して行い、生計を立てている。
本件においては申立人両名対相手方達也との間の対立が大きく、結局合意による解決がなされなかった理由もそういうところで、申立人両名の間では、両名で取得する遺産の分配、あるいは管理について合意によって円満に解決していける可能性が大きい。
3 (判断)
前記2の(1)ないし(3)の事実によって判断する。
前述のとおり、当事者らは相続税の支払いに遺産の一部を物納せざるを得ない事情にあり、当事者らの間で××丁目の物件の一部である本件土地<7>を物納することに合意が成立しているので、この土地は法定相続分に応じ、当事者らにおいてそれぞれの持分を3分の1として共有取得させる。
××丁目の物件中の本件土地<6>は過去現在にわたる占有使用状況、生業の根拠である事実、当人の強い希望等を考慮して相手方達也の取得とする。
×丁目の物件は土地建物ともすべてを、それぞれを申立人両名がそれぞれ2分の1の持分で共有で取得させる。これらの物件の管理、分割は申立人両名の協議に任せられることとなるが、申立人両名にはその能力があるものと考えられる。
別紙遺産目録掲記7、8の電話加入権と家具その他の家庭用財産は、従来の使用占有のいきさつ、価格その他すべての事情を考慮すれば、相手方達也に単独で取得させるのが相当である。
以上以外の遺産中、別紙遺産目録掲記3、4、5の貯金等の債権類はいずれも可分債権であって、相続開始によって相続人である当事者らにその法定相続分に応じて分割されているものと解すべきであるから、別段の合意が成立していない現在においては、各債権のそれぞれを法定相続分どおり3分して、その1宛てを当事者らが分割取得したものであり、そのことを確認的に宣言するのが相当である。同目録掲記6の現金も可分のものであるから、当事者ら3名にそれぞれ3分の1の額宛て取得させる。
以上のとおりの分割によれば、当事者らの意向によって不動産の価格についての鑑定を経ておらず、精密な計算評価はなされているとはいえないが、それぞれの相続分(取得分)には大きい違いはないと思われるので、調整金の支払いもなく、この分割が相当である。
4 (結論)
主文のとおり審判する。
別紙 遺産目録<省略>